平成21年度「キャリア健診モデル実施事業」結果報告

(厚生労働省委託)

社団法人日本労務研究会は、厚生労働省から「平成21年度キャリア健診モデル実施事業」を受託し、実施いたしました。その事業概要および実施結果は以下のとおりです。

●モデル実施事業の概要

【目 的】

「キャリア健診」は、企業における人材育成の現状を把握し、従業員へのキャリア形成支援を促すとともに、個々の従業員に対してキャリア形成意識を喚起することで、企業と従業員のより良い共生関係の構築に資することを目的としている。その具体的な手法は平成20年度から開発が進められ、平成21年度は、この開発された手法に基づき、その中核的な担い手となるキャリア・コンサルタントを活用して、実際に企業においてモデル実施を行い、その実施手法の確立に向けて改善等を図ることを目的とした。

【モデル実施期間】

○平成21年11月~平成22年3月

【対象企業・従業員】

○対象企業数91社(うち11社は診断シートのみ実施)

○キャリア・コンサルティング実施従業員数620人

【実施方法】

モデル実施企業の人事担当者等への事前ヒアリングを行うとともに、キャリア健診シートを使用して、当該モデル実施企業の人材育成等への取組みに関し、企業側、従業員側の双方から情報を得て、認識の違い等を把握する
当該モデル実施企業の従業員を対象に、キャリア・コンサルタントによるキャリア・コンサルティングを実施し、従業員のキャリア意識の向上を図る
上記①②の結果に基づいて、キャリア・コンサルタントが当該モデル実施企業に対して、従業員のキャリア形成支援促進に向けたコンサルティングを実施する
上記の一連のモデル実施の結果を踏まえ、キャリア健診が十分にその目的・機能を果たせるよう課題・問題点について検討し、キャリア健診シートおよびコンサルティング手法の改善を図っていく

【結果報告の概要】


第1部 キャリア健診の意義と今後の展望

1 キャリア健診の意義
キャリア健診とは、①健診シートを利用した企業の人材育成上の課題把握、②従業員へのキャリア・コンサルティング、③①②の結果を活用した企業向けコンサルティングを一体的に行うもの。
キャリア健診は、企業による従業員のキャリア形成支援を促進するとともに、従業員のキャリア意識の育成・強化を図り、企業と従業員が共に成長する共生関係の構築を目指して実施するもの。
キャリア健診の実施により、多くの企業において企業のキャリア形成支援意識が高まる結果となった。
キャリア健診に期待される効果として、各受診企業でキャリア形成支援の取組が進展するだけでなく、①中小企業を中心とした「キャリア」概念の啓発、②キャリア・コンサルティングの啓蒙・普及が進むことが期待される。
2.キャリア健診におけるキャリア・コンサルタントの活動成果と課題
キャリア健診において、キャリア・コンサルタントは、従業員及び企業の双方に対してコンサルティング活動を行う重要な役割。
従業員へのキャリア・コンサルティングでは、①「キャリア」の考え方を伝えられた、②キャリア目標をもつことの重要性に気づきを与えられた、③第三者に話すことで気持ちを軽くできた、④キャリア意識が高い面談者には目標の明確化の機会になった、等の効果がみられた。
企業へのコンサルティングでは、①企業が抱える課題等の客観的な確認や新たな発見につながった、②キャリア形成支援体制の整備の進展が期待できた、③企業側に「キャリア」という考え方の理解を求める好機となった、等の効果がみられた。
今後の課題として、企業向けコンサルティングの質の向上を図るため、キャリア・コンサルタントの能力向上を図ることが必要。
3.キャリア健診シートの結果活用の成果と課題
キャリア健診シートは、受診企業へのコンサルティング活動を支援するツールとして、キャリア・コンサルタントによる面接を通じた分析と相互補完的に活用されるもの。
キャリア健診シートによる診断の結果、①客観的で企業側に納得性の高い診断になった、②企業がキャリア形成支援に取り組む際の客観的な根拠が得られた、等の効果が見られた。
今後の課題として、データ分析の参考となるベンチマーク(標準値)を構築すること等が考えられる。
4.キャリア健診の今後の展開に向けて
キャリア健診を今後本格的に実施する際には、①健診の実施主体、②実施方法の確立、③キャリア・コンサルタントの育成、④健診後のフォローアップについて、検討又は改善が必要。

第2部 キャリア健診モデル実施の内容と今後の改善点

Ⅰ キャリア健診モデル実施の概要
91社に対して実施。
Ⅱ 健診シート開発の経緯とモデル実施後の検証・改善点
モデル実施後の因子分析により、シートの質問項目(20項目)を5領域(①キャリア目標の設定、②キャリア形成支援、③職場のサポート、④キャリア形成の自律性、⑤働き方の裁量性)に再整理。
モデル実施結果を通じ、①キャリアの概念の事前理解の促進、②健診シートの記入者・回収方法・質問項目の表現、③健診結果報告書におけるベンチマーク構築等について、改善を提言。
Ⅲ キャリア・コンサルタントの活動結果及びその改善
企業での事前ヒアリングにおいては、①事前ヒアリングシートの改善、②人事担当者等へのキャリア健診の事前周知について、改善を提言。
従業員へのキャリア・コンサルティングの効果的な実施のポイントとして、①周到な事前準備、②人事担当者・従業員へのキャリア健診の目的・意図の伝達、③テーマの絞り込みと面談形式に関する情報提供等を提言。
企業へのコンサルティングにおいてアドバイスのポイントとなる事項として、①経営理念・求める人材像の明確化、②研修制度の導入・活用、③社内コミュニケーションの促進、④面談制度の導入・運用、⑤計画的な異動(ジョブローテーション)、⑥キャリアパスの明示、⑦ロールモデルの育成、⑧業務運営の改善、⑨適正・公平な評価、⑩帰属意識の醸成と従業員の定着、⑪管理職の機能強化、⑫企業風土の改革、職場環境の整備があると分析。
詳細は、下記報告書をご覧ください。

●調査結果本文(PDF)